只見線の秘境駅を目指したはずの旅(その2)
2015/02/23
2006年4月7日 《第16号》
2003年3月29日(晴れ)日帰りの旅 〔全駅訪問通算9日目〕
別の秘境駅へ変更!?
小出駅
上越線に乗って北上した我々は「小出駅」に到着。
ここから運転本数の極端に少ない只見線に乗換です。
跨線橋を上り、只見線乗り場となるホームに降りる直前に、田子倉駅に関する注意書きがありました。
そこには、3月30日まで田子倉駅には列車は停車しない、ということが書かれています。
「・・・・・・・・。」
私は血の気が引いていくのを感じました。
一応私は友人に尋ねます。
「今日って、何日だっけ・・・?」
「29日」
表情一つかえず生真面目に答える友人。
私はというと、引きつった顔で乾いた笑いを浮かべていました。
田子倉駅が冬季休業だということは勿論私は知っていました。
それなのに、何故日付を確認しなかったのか意味が分りませんでした。
素人というのは本当に恐ろしいものです。
友人は「とにかく列車に乗ろう。それから考えよう」と言ってホームに降りていきました。
私はショックでフラつきながら彼に続きました。
ほどなくして緑色のラインが入った気動車は小出駅を出発しました。
私はというと、下を向き両手で顔を覆って時折みっともないため息をつくばかりです。
「とりあえず、目的の駅の一つ手前で降りよう」と友人が提案。
私はその提案に力なく頷くのでした。
大白川駅
かくして我々は、田子倉駅の一つ手前の「大白川駅」に下車しました。

細長い島式ホームです。
周囲は険しい山々が連なり、沿線には川が流れていました。
ここはここで、すさまじい駅だなと思う。
構内踏切を渡り、階段を登ると駅員が立っていたので、持っていた18きっぷを提示します。
きっぷを手渡された駅員は「うーん」とうなってしげしげときっぷをながめています。
私は何か不味いことでもしたのかと思い、不安な気持ちでその様子を見ていると、駅の入口でもう一人の駅員が顔を出し、
「あーすいません、こっちです」と言っておられる。
どうやら私がきっぷを渡した相手は保線員だったようです。
ようやく駅を出て、我々は一息つきます。
さて、どうしようか、と。
次の列車まで3時間もあるのです。
周辺は閑散としています。
民家は数えるくらいしか無く、あとは壁のような山がそびえるのみです。

とりあえず右手に進み、橋の上から川を眺め、すぐに飽きて駅舎に戻ります。
駅舎は2階建ての立派なもので、中もきれいです。
我々はベンチに座り、高崎駅で買っておいた弁当をほおばりました。
飯を食べてしまえば、またすることが無くなります。
私は時刻表を取り出し、隣の駅である「柿ノ木駅」までの距離を見ました。
3.5km。
私の顔に不気味な笑顔がやどり、甘く危険な声で、しかしハッキリとこう言いました。
「隣の駅まで歩こう。」
私がそう言ったときの友人の顔は今でも覚えています。
瞬時に眉間にしわが寄り、鋭い眼光で私を睨み、空気を一気に冷たいものへと変容させました。
人が殺人を犯すときの表情というのはこういうものだろうなと思う。
かまわず私は続けます。
時間は3時間あるし、たとえゆっくり歩いたところで3.5kmなんて1時間足らずでついてしまうし、このままここにいても何も始まらないではないか、と。
それを聞いても友人は鼻で笑い、全っ然乗り気でないです。
話し合いは10分近くにわたり、最終的に
「1時間歩いて着かなかったら戻ってくる」
という友人の申し出を私が受諾することで作戦決行となりました。
勿論私の腹の中では戻る気などさらさらありません。
これはタイプの問題なんだろうけど、私は、道に迷っても「とにかく進もう」で、友人は「まず元来た場所に戻る」と正反対のタイプなのです。
前者が危険なタイプだというのは言うまでもありませんが。
地図はないけど、どうせ着くだろう。
何故かこういうときだけ楽観主義が出てきて、私は先頭切ってずんずん歩きます。
駅が遠ざかると、民家は全くなくなり、車も忘れた頃に1台通るといった感じです。
道路沿いはまさに絶景で、川沿いに崖のような山が続いています。
道路は線路に沿っているのではなく、蛇行しています。
只見線の線路は現われては消え、また現われては見なくなります。
それが友人の恐怖心をあおるのか、途中から全く喋らなくなりました。
話しかけられるような表情ではなかったので、私も黙ってましたが。
道路はずっと下り坂ですが、山はどんどん深くなるような印象です。
途中から線路が全く見えなくなり、かなり歩いた実感があれど、駅に着く気配はありません。
しだいに私まで不安になってきました。
まもなく歩いて1時間が経ちます。
戻るにしても、今度は延々と坂を登る羽目になるのでもう戻れないでしょう。
不安がピークに達しようとしたとき、数件の民家が見えてきました。
この辺に駅があるのでしょうか?
民家と民家の間を注意深く見つつ歩いていると、ホームのようなものが見えました。
「あれだ!」私は叫びました。
さすがの友人もホッとしたのか笑っています。
私の頭の中では、ロッキー1の最終ラウンドの音楽が流れていました。
が、しかし、
ホームに行く道が雪で埋まっています。
誰も利用していないのでしょうか。
友人は雪になれているのか、雪山を登り、さっさとホーム側に行ってしまいました。
私はよろけながらなんとか雪を踏み越え、ようやく目的の駅に辿り着いたのです。
柿ノ木駅
「柿ノ木駅」

それにしてもこの質素な駅は何なんでしょう。
ここまで気合いの入った小さい駅は見たことがなかったのでカルチャーショックを受けました。
さて、ほぼ計画通りに1時間で到着したので、時間はたっぷり1時間半以上あまりました。
仕方がないので待合室で横になって、ずっと青い空を眺めていました。
「・・・・・・・・・・・・・。」
考えてみると、「何もしない」という時間など持ったこともなかったなと思う。
1時間以上何もしない、というのはなかなか出来ることではありません。
ある意味貴重で贅沢な時間ではあります。
16:47只見方面行き列車が到着し、我々は待合室内から見送りました。
あの列車が大白川で小出行き列車と交換するから、あと暫くだなと思う。
駅ともお別れで、旅も終わりを迎えると思うと少し淋しいような気分になります。
17:04柿ノ木駅に小出行き列車が到着し、我々は小出駅へと向かいました。
そして上越線で東京方面に向かって旅は終了です。
計画は破綻したけれど、それはそれで、結果的には悪くない旅でした。
友人がどう思っているか分らないけれど・・・・。
今回の旅で訪問した駅
2003年3月29日
【上越線】小出駅
【只見線】大白川駅、柿ノ木駅
●今回の旅で訪問した駅数 3駅
●総訪問駅数 89駅
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